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環境適応・環境ストレス耐性

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植物の環境適応とトレードオフ

植物は, 乾燥から湿潤(冠水)までの幅広い土壌水分に適切に応じています.

このような「多様性」がわたしたちの生活する地球環境や毎日の食事を支えています.では, 植物の環境適応の多様性はどのようなものであり, どのようにして生み出されているのでしょうか?その謎を解くことが, わたしたちの未来を守る「鍵」になります.

乾燥適応と冠水適応のトレードオフを広い視野で理解し, 各栽培環境に最適化した作物の育成に向けた情報整備が必要だと考えています.

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冠水適応・冠水ストレス耐性

近年の気候変動により, 大量の降雨による作物の湿害が​増加しています.地球の平均気温の上昇は, 洪水の頻度を増加させることも懸念されています.

一方で, イネやヨシの仲間には冠水に適応した種も存在します.

冠水土壌では, 酸素の欠乏によって根の呼吸が抑制されます.一方, 耐湿生の強い植物は, 植物体内に酸素の通り道である空隙(通気組織)を形成して, 根に酸素を効率よく供給しています.

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乾燥適応・乾燥ストレス耐性

地球温暖化は, 洪水と干ばつの二極化を引き起こします.そのため, 干ばつによる作物の被害も増加傾向にあります.

砂漠に育つサボテンは極端な例ですが, やはりムギやカヤの仲間には乾燥に適応した種も存在します.

乾燥土壌では, 水分の欠乏によって代謝が抑制されます.一方, 耐乾性の強い植物は, 水の通り道である管(道管)を発達させて土壌中深くから効率よく水を吸い上げることができます.

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Adaptation→Tolerance

身近な植物の環境適応(Adaptation)と作物の環境ストレス耐性(Tolerance)には相違点と共通点があります.

作物は, 豊富な水と養分を利用して最大限のアウトプットを得ることを目的に育種されてきました.そのため, 身近な野生植物とは養水分の利用効率は異なります.

一方で, 冠水に適応するために根に酸素を効率よく供給することや, 乾燥に適応するために土壌中深くから水を効率よく吸い上げることは環境適応と環境ストレス耐性に共通していると考えられます.

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根は土壌と直接触れる器官であり, 植物の成長に不可欠な水と養分を土壌から吸い上げることに寄与しています.

乾燥は土壌の水分が欠乏した状態であり, 冠水は土壌が過剰な水で満たされた状態です.そのため, 根は環境の影響を最も大きく受けるとも言えます.

つまり, 根は植物の環境適応におけるう鍵であり, 根の性質が適応する環境を決めていると考えられます.

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根の組織構造

​植物の根は共通した組織構造をもち, 内側から, 中心柱, 皮層, 表皮の順に並んでいます.中心柱の内部には道管と師管が含まれ, 道管は土壌中から地上部への養水分の輸送を担います.そのため, 中心柱は乾燥土壌への適応に重要な役割を果たしています.一方, 皮層には気体の通り道である通気組織が形成されるため, 皮層は冠水土壌への適応に重要な役割を果たしています.

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環境適応と根の解剖学的形質

私たちは, 植物の環境適応と根の組織構造の相関関係を発見しました.水田のような冠水を好むイネなどの湿生植物(左)は, 皮層が大きく通気組織が発達しています.一方, 排水性の良い畑のような環境を好むトウモロコシなどの非湿生植物(右)は, 内側の中心柱と道管が大きく発達しています.このような特徴を決める遺伝学的背景を理解し, 作物の環境ストレス耐性の強化につなげることを目指しています.

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